体系化が困難なIR活動
前回、IR活動は、3つのレベルに体系化できるとお伝えしました。
おそらく「IRレベルの体系化」について、今まで聞いたことはないと思います。
IR活動で成果を出すには、もちろん企業のIR活動における努力は重要ですが、それ以外に国内外の政治や経済情勢、第三者機関の動向(日銀・金融庁・取引所・証券会社・機関投資家・ファンド・アナリスト)、個人投資家の動向など多数の外部要因やその他の因子(factor)が混ざっており(交絡因子の存在)、シンプルに検証が難しく、IR活動を体系化する事は困難だとされてきました。
C&A総合研究所では、結果の伴う高度なソリューション技術を確立する為、絶えず業界や投資に関する研究開発をしており、「IRレベルの体系化」については2012年から研究を開始し2015年体系化に成功、その後数多くの現場で実践検証し多くの成果を上げてきました。今回は「C&Aソリューション」に応用されてきた体系化された「IRレベル」についてシリーズでご説明します。
今回は、その1回目、「IRレベル1」についてご説明します。
レベル1では、上場企業として最低限、開示が義務化されている資料が、ホームページで開示してある状況をいいます。
開示が義務化されている資料とは2つだけで、「決算短信」と「有価証券報告書=(有報)」です。
「有報」の発音は、ユーフォーではなく、ユーホウです。
「決算短信」と「有報」
「決算短信」も「有報」も、自社の企業概況や経営状況をまとめた資料のことで、企業の将来性や現在の状況を表すものです。
前者は取引所のルール、後者は金融商品取引法に基づいて、市場の公正化と投資家の保護の目的で作成され、3カ月ごとに開示されます。
両者の違いは、決算後45日以内に「速報」として開示される資料が「決算短信」。
詳しい内容が、決算後3カ月以内に「確定」として開示され資料が「有報」です。
よって、投資家は、決算発表日に企業のホームページか金融庁のEDINET(エディネット)で「速報」である「決算短信」を見て、決算状況を把握します。
「(決算)説明資料」と決算説明会
基本的に投資家は、「決算短信」と「有報」で企業の状況を把握するのですが、
これらの資料はページ数も多く(特に「有報」)、文字と数字が並んでおり、大変解りづらいので、企業はパワーポイントなどで独自に図表等にまとめた「(決算)説明資料」を作成し、ホームページに掲載します。ただし、この「(決算)説明資料」の作成や開示は「義務ではない」為、作成しない会社もあります。
上場企業は、この「(決算)説明資料」をプレゼン資料として用い、決算説明会等を本決算後に1回、あるいは半期ごとに年2回開催します。
3点セット「決算短信」、「有報」、「(決算)説明資料」
上記の3点セット、「決算短信」、「有報」、「(決算)説明資料」が
ホームページに掲載されており、決算説明会を開催していれば、
最低限のIR活動をしていると判断し、レベル1です。
新型コロナウイルスの影響で今回は決算説明会を開催できない企業もありますが、
コロナがきっかけで、今後はインターネットを使ったライブ説明会等が主流になると思います。
投資家視点のポイント「IRレベル1」
ここまで資料の解説ばかりだったので、レベル1の企業に対する「投資家視点のポイント」をお伝えします。
それは、「(決算)説明資料」をしっかり読み解くというものです。
ポイントは2つあります。
一つ目は、「決算短信」や「有報」の内容を「(決算)説明資料」でどう記載しているか?
2つ目は、「決算短信」や「有報」に記載されていない様々な情報(インサイダーではない)が記載されていれば、「なぜ企業はその情報を今回伝えようとしているのか」ということを考え、「(決算)説明資料
」をじっくり読み解くことです。
すると、これから述べる点は機関投資家と私の意見が合致するところですが、
「(決算)説明資料」を見れば、「企業のIR活動へ取り組む姿勢が見えてくる」、
そして「今後の株価の推移も大体予想できる」というものです。
そこで、この「企業のIR活動へ取り組む姿勢」が、資料から伝わってこなければ、
残念ながら、前回お伝えした「投資家が投資をしたくなる様なIR活動をする事」にはならないということです。
「企業のIR活動へ取り組む姿勢」が伝わってくる資料とは?
この件については、また別の機会にお伝えすることとします。
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